logo

2023年 春 (68号)

ニュースレター

展示

個人、家計を越えて、
国家経済に寄与した資産蓄積の歴史

<大金の夢 :財テクで見た韓国現代史>

3月3日から開催されている<大金の夢:財テクで見た韓国現代史>は、大金作りに関連する質問とそれへの答えという形式で企画された特別展である。金融機関の誕生前の財テク方法から現在に至るまでの韓国現代史の中で見られる財テクの流れが簡単に理解できるように用意された多様な体験プログラムと展示物を先に見てみよう。

多様な展示資料と体験を通して見る財テクの現代史

"いくらあればいい"
この質問から展示はスタートする。大金の規模や概念、大金作りの方法などは、人によって異なるため、各自が自らその意味を考えてみようという趣旨で最初の質問を挑発的に投げかけた。

「自救策の財テク―どこかに埋められている私のお金」コーナーでは、近代の金融機関が導入される前の人による大金作りの方法を窺うことができる。重い金庫や米を大事に入れておく節米桶などの展示資料を通じて資産管理の歴史をひと目で確認できる。

「節約すると本当に暮らしが良くなるんですか」コーナーでは、貯蓄を中心に話を進めていく。時代別金利を通じて大金作りシナリオが直接体験できるプログラムの「私の貯蓄日誌」は、観覧客に新しい経験を提示する。

不動産をテーマとした財テクの歴史も紹介する。「我が家購入は、何時になったらできるのか」という質問から始まるこのコーナーでは、単純に資産増殖の手段ではなく、住居安定の手段としての不動産を取引するために必要な情報を提供する。韓国特有の住宅制度である傳貰とアパート居住の歴史,アパートを得るために精管切断手術を受けたエピソードなどにも出会う。

文明が持続する限り続く大金作りの夢

証券に関連する展示資料を眺めている観覧客 ©連合ニュース

株式を中心とする投資話のコーナーも設けられていて、1956年大韓証券去来所の開所以降スマートフォンによる株取引が可能になった今日に至るまでの取引道具の変遷史が見られる。また韓国取引所の株式投資ゲームの「トレーディングフロア」と観覧客が10億ウォンのお金で参加する資産投資ゲームの体験などを通じて私たちが抱いている大金の意味と夢を考えてみる機会が用意されている。

「大金作り」という夢は、人類が存在する限り今後も続くだろう。個人と家計を越えて、国の経済成長に寄与してきた資産蓄積の歴史が見られる今回の展示が、賢い経済生活のために今日を生きる私たちに必要なものは何かについても考えてみるきっかけになってほしい。

現在のキーワード

2023年、どのような財テクが流行しているのか?

急激に落ち込んだ経済成長率と経済危機

過去5年間の大韓民国の経済成長率(出処:統計庁)

韓国の経済成長率は、1980年代には10%、1990年代だけでも8%を超えていた。しかし1996年のIMF経済危機と2008年のアメリカ金融危機に見舞われながら2010年代に入り経済成長率も急激に落ち込んだため実質的資産価値の大きな上昇は期待できなくなった。その最中、コロナ経済危機まで重なって株式や不動産なども大変大きな変動性を持つようになった。

新しい財テク領域となったソーシャルネットワーク

最近ではMZ世代を中心に財テク市場でも大きな変化が感知されている。財テクの必須要素の市場が形成されるためには需要者と供給者、両者が会う一定の場所が必要である。特定分野に小数でも集まることができるのであれば財テクの領域は、無限に拡大することも可能であろう。この想像を現実に仕立てあげたのは、まさに空間を超えて多くの人々が集まり、情報が共有できるソーシャルネットワークサービスである。

今は少人数だけが集まっても、財テクの領域は拡大できる。最近活性化されている中古取り引き、リセール市場、物々交換などがそれである。市場という概念がインターネットで拡大するにつれて資産ではない消費財さえもそのリセール価値が高まるという奇現象が発生している。代表的な例が名品財テクである。特定の名品ブランドを活用するシャテック (cha-tech)は、最近MZ世代のなかでヒップしている財テクの一種であり、それ以外にも名品時計ブランドを活用した「ロールテック」、人々が欲しがるスニーカーを利用する「シュテック」などがある。

趣味と財テクが結合した形態も増えている。組み立ておもちゃを基盤とするレゴ財テクが代表的である。希少なおもちゃアイテムが小数の人々のなかで関心をよく集めると市場が形成され、その市場でおもちゃは優れた財テクのアイテムに変身するようになる。

今ではますます消えていく実物貨幣のコインを利用する財テクもある。特定年度に鋳造されたコインが希少性を帯びた場合、値段が毎年10パーセント以上上昇することもあり、銀行金利に比べて3倍の収益率を上げるアイテムとして注目されている。

それ以外にも有名な美術作品を利用してお金を儲けるアートテック、個人投資者が特定音源に共同で投資してからその所有権を分け持つミュージックテックなども人気を呼んでいる。

2023年財テク、しばらくは安定型資産に集中すべき

超低成長とスタグフレーションは、資本主義が成熟する過程で現れる代表的な特徴である。韓国も先進国型経済に進入するにつれて、今はもはや以前の高成長を期待することはできない。超低成長社会では安全性の高い資産がますます高くなる特徴が発生するが、頻繁な経済危機のたびに繰り返される金、ドル、アパートの価格暴騰がこのような現象のひとつである。

このような時代に生活資金や住宅資金などを用いて投資しなければならない庶民が、まかり間違えて雰囲気に飲み込まれてしまい合理的な判断ができないまま危険を冒すと大きな不覚を取ってしまう。また以前のように一度財テクーが上手くいくと老後状況が変わり、経済状況を劇的に変えることができるという考えを捨てることが大事である。

すなわち、未来の経済的安定とは、自分の仕事が成長し、職場での自分の立場が固まり、健康的に仕事を長くする過程で決まることであって、財テクだけでは成功は決まらないものである。2023年1年間は、最近顕著になってきた景気低迷や金融不安感を考慮して、当分危険資産よりは預貯金中心の安定型資産に集中する必要がある。

韓国歴史の見慣れないビュー

現代史記録映像のアーカイブプラットホーム

<動く現代史:鮮明な歴史>

韓国現代史を網羅したデジタルアーカイブ

現在、多様なオンラインプラットホームが存在して人々が各自楽しむ映像は異なるが、以前は固定されたTVチャンネルを通して送出されるイメージによって集団意識が作り出されていた。ケネディ大統領の暗殺、ヒンデンブルク飛行船の火災映像、初の月探査の場面などをほとんどすべての人が同じ画面を目にしていたためだ。韓国にもそういう映像がある。ソウルと釜山をつなぐ高速道路の開通場面、1988年ソウルオリンピック開催の映像、キム・テジュン大統領と金正日による初の首脳会談などは、韓国現代史の主要な場面として私たちの意識を支配しているといえる。

そのため携帯電話がなかった頃に撮られた韓国の多くの映像を公開することは、嬉しい限りである。KBSと大韓民国歴史博物館が共同で構築した「動く現代史、鮮明な歴史」と名付けられたデジタルアーカイブでは、1904年から1970年代までの韓国現代史を網羅する記録映像を見ることができる。

記録映像から見る韓国の現代史

朝鮮オリンピックスピードスケート選手団(1947年)

その中で、いくつかの資料を紹介したい。まず、「朝鮮オリンピックスピードスケート選手団」と名付けられた映像は、きつく凍りついた景福宮の湖上でスケート選手たちが1948年冬季オリンピックに参加するために訓練する姿が収められている。映像の中の国家代表選手たちは、凍りついた湖上でぶかぶかしたズボン姿で練習している。最新式で建てられた氷上競技場で人体工学的に製作された氷上着を着用して練習する今とはまったく違う。

ソウルスケッチ(1947年)

当時の韓国の日常風景が収められている映像も興味深く感じられた。「ソウルスケッチ」(1947年)あるいは「解放後のソウル」(1947年)のような映像を見ると光復以後のソウルの日常を垣間見ることができる。疎らに連なっている低い屋根の家々、村の共同井戸、馬車、背負子を背負っている人で満ちているソウルの街並みは、今では高く聳えるアパートとビル群、終日渋滞する道路、スマートフォンを手にしているビジネスマンが忙しそうに行き来する姿に変わっている。

英親王と伊藤博文 (1909年)

次の映像は、大韓帝国最後の皇太子である英親王が、日本留学時期に伊藤博文などとともに海辺を歩いたりブランコに乗ったりしている姿が収められている「英親王と伊藤博文」である。最近私がエキストラで出演した映画 <ハルビン>が安重根義士による伊藤博文の暗殺を背景としているだけに私にも意味深い映像である。このような諸資料がなかったら歴史は想像の中でしか再現できなかっただろう。

さほど遠くない過去の記憶を呼び起こす

イギリスにもこのような記録映像が見られるアーカイブが構築されている。イギリスのブリティッシュ・パテ・ニュース(Pathe News)という一つの団体が、過去約100年間撮られたニュース映像をホームページ(https://www.britishpathe.com/)から無料で鑑賞できるように公開している。その中には 2,278本の韓国関連映像もアップロードされていて、それらは主に1920年代から1980年の間に製作された資料で6・25戦争当時最戦線での戦闘シーンや韓国の主要スポーツ記録映像である。

その時代、その時期を生き抜いてきた方々から直々に現代史の物語を聞くことができる時間は、刻一刻少なくなっている。だからこそ記録映像は、より一層貴重である。この文章を読む皆さんも毎日見ているグルメ映像をしばらく停止させておき、デジタルアーカイブプラットホーム <動く現代史:鮮明な歴史>に接続してさほど遠くない過去の記憶をしばし呼び起こしてみたらどうだろうか。

博物館レビュー

3・1節104周年記念の小規模の展示 :
<知られざる3・1運動の物語>の開催

2023年2月24日(金)から小規模の展示 <知られざる3・1運動の物語>が開催されている。博物館1階のロビーで開かれているこの展示では、本博物館が唯一所蔵している『半島新聞(バンドシンムン)』が初めて公開されている。今回の展示で公開される『半島新聞』 38ヶ号では、韓国内外の3・1運動 1周年記念万歳運動に関連する記事が掲載されている。培材高等普通学校と培花女学校の学生による万歳運動、ロシア沿海州の新韓村、東京朝鮮人留学生の万歳運動を確認することができ、安重根義士による伊藤博文暗殺義挙に助力した上海臨時政府財務総長崔在亨(チェゼヒョン)が沿海州で銃殺された事件に関する集中報道も確認できる。

現代史記録映像アーカイブサービスを開始、 KBSと協業で公開

1945年9月ホッジ(John R. Hodge)米軍政司令官が日本軍代表から降伏文書に署名を受けた後、街の市民たちと米軍が歓声を上げる姿

大韓民国歴史博物館が現代史記録映像アーカイブプラットホームの <動く現代史:鮮明な歴史>を公開した。このプラットホームでは、外地で活動していた独立運動家、太平洋戦争に動員された韓国人、喜びと葛藤が入り混じっている解放空間、そして戦争と分断に至るまでの韓国現代史の主要な事件現場と日常風景を記録したフィルム資料を鑑賞できる。2023年3月3日(金)に合計 2,422分分量の映像335本を博物館ホームページ (archive.much.go.kr/history_films.do)に先行公開し、また来る6月には 6・25戦争(朝鮮戦争)関連の映像 約460本を追加で公開する予定である。

博物館プレビュー

障害者の日記念文化公演
<博物館で通じ合う-以心伝心コンサート>

大韓民国歴史博物館は、2023年4月22日(土)午後 2時障害者の日記念公演 <博物館で通じ合う-以心伝心コンサート>を開催する。障害芸術人と非障害者芸術人による合同公演に声楽家パク・ミンギュとユン・ジョンジュン、ポップペラ歌手JUENなどが出演して、偏見と逆境を克服して互い疎通しながら希望を伝える曲を披露する予定である。文化公演は、博物館ホームページ (www.much.go.kr)で一週間前の事前予約または現場受付を行うことで誰でも参加できる。

National Museum of Korean Contemporary History Newsletter 2023年 春 (68号)
/ ISSN 2733-7138
198 Sejong-daero, Jongro-gu, Seoul, 03141, Republic of Korea / 82-2-3703-9200 / www.much.go.kr
Editor: Lee SeungJae, Ahn SeongIn, Tak MinJung, Shin JungSoo
/ Design: plus81studios

Copyright. National Museum of Korean Contemporary History all rights reserved.