2021-6 / Volume 61 / ISSN 2733-7138

開館10周年

この10年間人々に最も愛された資料

  • -
  • 大韓民国歴史博物館開館10周年記念

2012年12月、大韓民国歴史博物館は「大韓民国の誕生と発展を牽引した韓国の人々の多様な歴史的経験を分かち合い、共感する歴史文化空間」を目指して開館した。そして2022年、いよいよ開館10周年を迎える。2022年にも大韓民国歴史博物館は韓国の近現代史を見つめ直し、人々に寄り添うための努力を続けていく計画である。特別展「空間で見る韓国現代史、光化門」の開催に続いて1月にはテーマ館がオープン。ここでは歴史館では取り上げにくい韓国の近現代史に関するさまざまなテーマにスポットをあてることになっており、2022年にはベストセラーと広告をテーマにした展示会を計画している。このほか、第100回こどもの日記念写真展、パンデミック特別展、金融特別展といった企画展が目白押しとなる予定だ。

さて、当博物館に展示された資料のうち、この10年間で人々に最も愛されたのは何だろうか。2018年に博物館利用者と市民9,000人余りを対象に実施したオンライン投票の結果をもとに、人々に最も愛された主要な資料を紹介する。

1. 大韓民国の最高統治機構が生まれた日――政府樹立国民祝賀式の写真(1948)

1948年8月15日に中央庁で開かれた大韓民国政府樹立国民祝賀式の写真。光復(植民地支配からの解放)後、1948年5月10日に韓国で国連の監視のもと総選挙が行われたのに続き、憲法制定、初代大統領選挙の実施、内閣の組閣など国の基盤を整えた後、光復3周年に合わせて多くの国民の喜びのなかで大韓民国政府が樹立された。

2. 18歳の少女が鉛筆とペンで伝えた市民革命の現場――4.19革命当時の女子高生の日記(1959-1960)

1960年4月、政権の独裁や不正腐敗に対して市民が抗議して4.19革命が起きたが、当時18歳で高校2年生だったイ・ジェヨンさんが激しい市民革命の真っ只中で歴史の現場のリアルな様子を鉛筆とペンでノートに書き記した。日記は1959年9月12日から1960年10月11日までのもの。

3. 韓国の車が海外へ――韓国固有モデル自動車第1号「ポニーⅠ」(1982)

イタリアの自動車デザイン会社イタルデザイン・ジウジアーロ(Italdesign-Giugiaro S.p.A.)がデザインし、現代自動車が蔚山工場完成後に初めて生産した韓国固有モデル自動車第1号。モデル名は「ポニー1400GL」で、輸出型モデルとして生産された。韓国国内市場シェア60%を超え、海外でも好評を得て1984年には単一車種で生産台数50万台を突破した。

4. 私の家族をさがしてください――離散家族をさがすプラカード(1983)

1983年6月から11月まで138日間、KBS 1TVで特別生放送「離散家族をさがします」が放映され、6.25戦争(朝鮮戦争)で離れ離れになった家族をさがすために多くの人がプラカードを持ってKBSのある汝矣島に駆け付けた。この資料は江原道洪川郡に住むユ・ヨンスクさんが義弟をさがすために書いたもので、右端に放送局審議済の印が押してある。

5. 伝統工芸で表現されたトーチの美しさ――第24回ソウルオリンピックの聖火トーチ(1988)

1988年第24回ソウルオリンピックの開幕を告げた聖火トーチ。古代に宮中で使われた龍文の火炉をモチーフにデザインされた。火を灯す部分の周りにあしらわれた2匹の龍はオリンピックが戊辰の年に開かれることを表している。また、エンブレムは七宝で韓国の伝統的な色彩を表現している。

なお、当博物館は開館10周年を記念して、ドラマチックな韓国の歴史が息づく博物館のイメージをダンスで表現する広報映像を制作した。下のリンクをクリックして見ることができる。

特別展

大韓民国を象徴する空間、光化門

  • -
  • 特別展「空間で見る韓国現代史、光化門」

光復以降現在まで光化門周辺は政治、行政、外交の中心であり、民主主義への情熱が表出する空間だった。また、韓国現代史の中心であり、さまざまな文化活動が繰り広げられることから、韓国を象徴する空間とも言える。大韓民国歴史博物館は現代の人々の記憶と経験が共存する光化門の街をテーマにした特別展「空間で見る韓国現代史、光化門」を2021年12月17日から2022年3月31日まで開催する。本特別展は当博物館と国立古宮博物館、ソウル歴史博物館が協力して光化門一帯の歴史と文化を探るプロジェクト「光化門600年:3つの物語」の一環で、大韓民国歴史博物館では「空間」をテーマに光化門の物語を紹介する。

本特別展は4部構成となっている。第1部では「取り戻した光化門」というタイトルで、朝鮮総督府庁舎とともに日本植民地権力を象徴する空間となっていた光化門周辺が、光復後、歴史空間として韓国の人々のもとに戻ったことに注目する。続いて「光化門の街の開発と建設」と題する第2部では、1960年代に光化門一帯が本格的に開発され、現代的景観の基盤が築かれたことを紹介する。第3部「光化門の街の現代的構成」では、江南開発とともに進められた江北都心の再開発などによって現代的景観に様変わりした現在の光化門を見ることができる。最後に第4部では「光化門空間の転換」というタイトルで、1987年の6月民主抗争以降の社会変化を背景にした光化門周辺の空間の変化について説明する。

本特別展が、光化門周辺が韓国現代史の重要な現場であったことを再発見し、空間の変遷とともに韓国の人々の記憶に刻まれたさまざまな物語を紐解くことで、光化門周辺の空間の未来を描いてみる機会になればと願う。

歴史の中の今日

夜の自由を奪われたあの頃

  • -
  • 夜間通行禁止令があった時代

2020年から新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい、アメリカ、オーストラリア、フランス、タイなど一部の国では一時的に夜間外出禁止令が出された。若い世代には耳慣れないかもしれないが、「通禁(トングム、夜間通行禁止の略)」という言葉を知っている人なら「昔はそうだったよね」と過去を思い出すだろう。韓国でも夜中に街を歩いていると罰せられる時代があったのだ。毎晩10時になると、ラジオから帰宅を促す放送が流れ、人々は慌ただしく最終バスやタクシーに乗り込んだ。そして、夜の12時になるとバリケードが設置され、防犯隊員たちが取り締まりを始めた。今は見られない「夜間通行禁止」時代の風景である。

夜間通行禁止制度は朝鮮時代にもあったが、現代に入ってからは1945年の解放直後に米軍政が「治安と秩序の維持」を名目に実施した。その後、6.25戦争を経てそのまま根付き、1982年1月まで約37年間続いた。通行禁止の時間は時期によって多少異なるが、だいたい夜12時から午前4時までだった。夜中に歩いていて防犯隊員に摘発されると、近くの交番や臨時収容所に連れて行かれ、午前4時に通行禁止が解除されてから即決審判を受けて罰金を払ったうえで解放された。

©聯合ニュース

©聯合ニュース

37年間に及ぶ夜間通行禁止令は、一部地域(軍事境界線近くの地域の一部)を除いて1982年1月5日に解除された。背景に、1986年のアジア大会や1988年のオリンピックなど国際的なスポーツ大会があったと言われる。その後、1986年と1989年に除外されていた一部地域の通行禁止令も解かれたことで、ようやく全国の人々が夜の時間を楽しめるようになった。

バスと地下鉄は午前0時以降まで運行時間を延長し、深夜に営業する店も登場した。また、飛行機の発着時間が拡大され、サービス分野での雇用も増えて、莫大な経済効果をもたらした。何よりも、長年人々が午前0時から4時までの「移動の自由」を国に奪われていたので、夜間通行禁止令の解除は国民の基本権と自由を回復させる象徴的な措置だったと言える。

文化公演レビュー

ミューズサロン(11月24日)

世界を舞台に活躍するカナダ在住のバイオリニスト、チョ・ジンジュとピアニストのパク・ジョンヘの協演による特別なステージ。若さと力強さ、そして音楽の深みと優れた解釈力まで兼ね備えた2人の演奏は、博物館文化公演の格式を高めたと言えるだろう。特に多彩な表情やパフォーマンスは、生の公演を見ることの意義深さを実感させてくれた。

ハリムとブルーキャメルアンサンブルのディアスポラの物語(12月15日)

さすらい人にとって音楽は、自分たちのルーツを確認できるアイデンティティでもある。多くの人々の間で愛された近現代の音楽は静かに人と人をつなげてくれるが、今回の公演でハリムとブルーキャメルアンサンブルは、彼らの音楽を通して人々の流浪の物語を聞かせてくれた。

博物館プレビュー

光化時代

大韓民国歴史博物館は2022年2月、韓国コンテンツ振興院と協力して、韓国の歴史と未来の象徴である光化門で「光化時代」を公開する。光化時代は光化門一帯で5G実感型コンテンツを楽しめるプロジェクトである。本プロジェクトの一環として大韓民国歴史博物館の外壁に光化門の象徴性をテーマにしたコンテンツを映し出すと同時に、誰でも参加できる多様な参加型コンテンツを上映する予定だ。

光化門は現在の大韓民国を象徴する代表的な空間であるとともに、韓国現代史の目撃者であり主人公でもある。光復から現在までの光化門周辺の変遷を取り上げた特別展「空間で見る韓国現代史、光化門」に続いて、最新の技術で具現化された光化門周辺の街をぜひご覧いただきたい。

「光化時代」が映し出された大韓民国歴史博物館の外観(予想図)

National Meseum of Korean Contemporary History Newsletter 2021-6, Vol.61
198 Sejong-daero, Jongro-gu, Seoul, 03141, Republic of Korea / 82-2-3703-9200 / www.much.go.kr
Editor: PARK Sookhee, KIM Hyunjung, HONG Yeonju, KIM Hyewon
/ Design: plus81studios

Copyright. National Museum of Korean Contemporary History all rights reserved.