2021-4 / Volume 59 / ISSN 2733-7138

特別展

「人、数字:人口で見る韓国現代史」

2021年8月20日(金)~2021年11月21日(日)、大韓民国歴史博物館 3階 特別展示室

統計庁の推計によると、大韓民国の今年の人口は5,182万1,669人である。単なる数字に過ぎない人口が、大韓民国政府樹立以降、大きな関心事であり続けた理由は何だろうか。

1970年代まで、韓国は急激な人口増加によるさまざまな社会問題を経験した。それから半世紀が経ち、現在では逆に少子化に伴う人口減少など新たな問題を抱えている。このように韓国の現代史において、人口の変化が人々の暮らしをどのように変えたのかを振り返り、現在の人口問題の解決策を一緒に考える機会にしようと、人口を切り口とした特別展「人、数字」を企画した。

展示においてとりわけ焦点を当てたのは、人口を決める要因のうち「出生」である。人口爆発、性比不均衡、少子高齢化などといった問題を中心に、これに関連した人々の暮らしがわかるように展示を構成した。

完全避妊ダイアル(円板を回して月経周期を計算する時使用

本展は4部構成になっている。プロローグでは、かつて全国の主要な場所に設置されていた「人口塔」の模型を中心に、時代別のスローガンや人口をイメージしたメディアアートを設置。第1部では「人 100」をテーマにした円形の映像から、100というキーワードを中心に韓国の主な人口関連指標や情報を確認できる。第2部では、「むやみに産んでは乞食になることを免れない」というやや過激なスローガンを通して、休戦後のベビーブームなど人口爆発について紹介。

そして第3部では、今の中年層によく知られている「男女を区別せず、2人だけ産んでしっかり育てよう」というスローガンを通して、性比不均衡の問題を取り上げている。続いて第4部では、「カフェ100」というタイトルで人生100年時代を迎えた私たちの声を集めて未来を描き、最後にエピローグでは、現在の人口問題についていくつかの質問を投げかけ、展示を観覧した人がそれに答えるようになっている。

本展が、数字に映し出される私たちの暮らしに目を向け、人口問題について考えるきっかけになればと願っている。

研究及び発刊物

博物館ではどんな資料をどのように研究するのか

- 2021年「博物館主要資料研究」事業とその成果を中心に

大韓民国歴史博物館では、歴史学だけでなく政治学、経済学、社会学、人類学、民俗学、教育学、博物館学などさまざまな専攻の研究人材が集まり、各自の専攻を生かして学芸業務を行っている。そのなかで自分の専攻や研究能力を最も発揮できる業務のひとつが調査・研究であろう。2019年から始まった「博物館主要資料研究」事業は、学芸研究職の職員が博物館の代表的な資料や新たに注目すべき資料を直接選定し、それに関する歴史やストーリーを紡ぎ出す、当博物館独自の研究事業である。

その最初の成果として2020年に4種の図書を発刊したのに続き、2021年夏には、日本植民地時代の資料を研究した2件の資料を2種の図書として発刊した。本文では2021年に発刊された2つの資料を中心に紹介する。

『監禁と統制の記録:西大門刑務所刑務要覧(1939)研究』 (ハン・サンウク 学芸研究員)

日本植民地時代に西大門刑務所職員交友会が発行した「西大門刑務所刑務要覧」に関する研究成果である。同要覧は、独立運動家たちに対する拷問や人権侵害が行われた西大門刑務所について「朝鮮における行刑の文明化、最初の近代的監獄の導入と運営」と記された日本植民地時代の資料である。本書は「西大門刑務所刑務要覧」を中心に関連資料などを研究し、朝鮮総督府が植民地の朝鮮で行った刑事政策や行刑制度を解明している。

1939年に発行された「西大門刑務所刑務要覧」

『“保険販売王”朝鮮総督府:朝鮮簡易生命保険証書研究』
(チョ・ソヨン 学芸研究員)

日本植民地時代に朝鮮総督府傘下の逓信局が発行した「朝鮮簡易生命保険証書」と「保険料領収帳」に関する研究で、逓信局の生命保険制度や、日本の大蔵省に送られた保険料の運用方法、保険料収奪の実態を紹介している。また、この時期の新聞に登場する「保険犯罪」の事例を通して植民地時代における保険の特殊性も分析した。

1936年1月に朝鮮総督府逓信局が交付した保険証書

「博物館主要資料研究」の利用方法

これまで当博物館が発刊した6種の図書は、国公立図書館で閲覧できるほか、大韓民国歴史博物館のウェブサイトからもE-bookやPDFで見ることができる。さらに、「博物館主要資料研究」事業の成果をオンライン動画コンテンツとして企画・制作中であり、当博物館の研究資料やそれにまつわる人々の物語を盛り込むことで韓国の近現代史をより立体的かつ楽しく伝えられると考えている。

下記のリンクをクリックすると博物館で発刊した研究資料を見ることが出来ます。

歴史の中の今日

南北朝鮮国連に同時加盟、そして同床異夢

1991年9月17日、ニューヨーク国連本部に太極旗と人共旗(北朝鮮国旗)が並べて掲げられた。同日開かれた第46回国連総会で、朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国がそれぞれ160番目、161番目の加盟国として同時に国連に加盟したのである。

韓国は1948年の単独政府樹立以降、何度も国連加盟を申請したが、そのたびにロシア(旧ソ連)と中国が拒否権を行使した。一方、北朝鮮も1949年2月9日、大韓民国の国連加盟に反対すると同時に国連加盟を申請したが実現せず、その後も継続的に申請を試みたが、国連憲章を遵守する意志が欠けているとみなされたために認められなかった。

1991年、南北の国連加盟が確定して互いに祝いの言葉を交わす南北の代表 ©聯合ニュース

単独加盟を目指してきた大韓民国は、1970年代のデタント(東西陣営間の緊張緩和)の気流に乗って1973年、6.23平和統一外交政策宣言(以下、6.23宣言)を発表し、従来の態度を変えて北朝鮮との同時加盟を容認することにした。6.23宣言には、北朝鮮の実体を認め、朝鮮半島に安定した平和共存体制を構築したいという政策意志が込められている。

さらに、1988年から韓国政府が推進した「北方外交」(中国やロシアなど社会主義諸国との関係改善を通して朝鮮半島の緊張緩和や平和定着、統一の基盤づくりを目指す外交政策)のため、ロシアと中国が南北の国連同時加盟に前向きなシグナルを送った。こうした情勢の急変を受けて、それまで南北の同時加盟に反対してきた北朝鮮は1991年5月27日、「一時的難局を打開するための措置」として同時加盟を推進する方針を発表した。そして1991年9月17日、国連総会において大韓民国と北朝鮮の同時加盟案が加盟159カ国の満場一致で承認された。

南北の国連同時加盟は、朝鮮半島に2つの主権国家があることを世界に向けて認めるきっかけとなった。長年続いた対立を緩和する糸口をつかんだという点で同時加盟の意義は非常に大きい。しかし残念ながら、あの日の歴史的決定もむなしく、現在に至るまで南北は葛藤と対話を延々と繰り返している。果たして朝鮮半島に春は訪れるのだろうか。訪れるとしたらそれはいつ頃になるのだろうか。

文化行事のハイライト

光復節記念クラシックコンサート 「私たちが一つになって」

8月15日、光復節を記念して大韓民国歴史博物館のクラシック公演団が「私たちが一つになって」というタイトルでコンサートを開いた。独立、祖国、春など光復節を連想させるキーワードの曲が披露され、光を失っていた韓民族がつらい現実に屈せず希望を抱き続け、やがて独立を迎えるまでの過程を1時間余りにわたってドラマチックに描いた。

同公演で披露されたのは8曲。「鳥よ鳥よ」「光復軍のアリラン」「独立軍歌」をメドレーにしたオープニング曲と、光復(解放)以降目覚ましい発展を遂げた韓民族を表現した「光で羽ばたく」で始まり、続いて個々の楽器の音が際立つ3曲が演奏された。まず、「パッサカリア(Passacaglia)」はバイオリンとチェロが、時には愛し合うように、時には争うように響く多彩な展開が特徴の曲である。その次はチェコの民族主義の作曲家ベドルジハ・スメタナ(Bedrich Smetana)の交響詩『わが祖国』の「モルダウ」をアレンジしたもので、この曲ではバイオリン、フルート、ピアノ、ホルンが、奪われた祖国への想いを切なく伝えてくれる。そして、バイオリン、チェロ、クラリネット、ホルン、ピアノによるシベリウスの「フィンランディア」は、帝政ロシアの圧政に苦しめられたフィンランドの悲しい歴史が刻まれた曲である。この後、「宗教的な音楽」を意味する「レリジオーソ(Religioso)」により、厳かな雰囲気のなか、幾多の受難を乗り越えてきた韓民族の姿を表現し、最後に歌曲「鳳仙花」と「故郷の春」で公演を締めくくった。

当博物館と海外文化広報院のYouTubeチャンネルでライブ配信された同公演は、約1万2,000人が視聴するなど好評を得た。光復節を記念する公演だったが、コロナ禍で大変な思いをしている人々にとって癒やしのひとときとなったようである。

下記のリンクをクリックすると光復節講演のハイライト映像を鑑賞することが 出来ます。

著者と語る歴史本屋ブックストーリー

「歴史本屋ブックストーリー」は、韓国の現代史を垣間見ることができる本を選定して著者と語り合う文化イベントで、今年2回開かれた。題材となった本はどちらも8月21日から開催される人口特別展と連携したもの。まず、8月12日には子ども向け絵本『僕のパンツ』の作者パク・ジョンチェさんを招待して1980年代の暮らしぶりについて話を聞き、8月21日には『家族と統治』の著者チョ・ウンジュさんを招いて「家族と統治―人口はどのようにして政治の問題となったのか」をテーマに本の内容について語り合った。

National Meseum of Korean Contemporary History Newsletter 2021-4, Vol.59
198 Sejong-daero, Jongro-gu, Seoul, 03141, Republic of Korea / 82-2-3703-9200 / www.much.go.kr
Editor: PARK Sookhee, KIM Hyunjung, HONG Yeonju, KIM Hyewon, MOON Soyoung
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