2021-3 / Volume 58 / ISSN 2733-7138

SPECIAL INTERVIEW

大韓民国歴史博物館 南希叔・新館長インタビュー

文化体育観光部は5月7日、大韓民国歴史博物館の新館長に、同博物館資料管理課長の南希叔(ナム・ヒスク)氏を任命した。南館長はソウル大学国史学科で博士号を取得し、大韓民国歴史博物館で調査研究課長、研究企画課長、資料管理課長などを歴任した。

Q: 就任にあたってのご感想をお聞かせください。

歴史学を専攻した者として大韓民国歴史博物館で一生懸命働いてきたことを認められたようで嬉しいです。来年(2022年)は開館10周年にあたる節目の年です。次の10年を見据えた新たな方向性を示す重要な時期に館長という重大な任務を背負い、責任感と使命感に駆られています。

Q: 館長がお考えになる、大韓民国歴史博物館が目指す価値は何でしょうか?

大韓民国歴史博物館は、大韓民国の誕生と発展を支えてきた国民の多様な経験や記憶を共有し、共感し合うための歴史文化空間です。共感のためには、何よりも「客観性」が担保されなければなりません。韓国の歴史には目覚ましい発展があった一方で、暗黒の時代もありました。客観的な事実とバランスのとれた解釈を提示し、相互理解によって人々が過去の葛藤や傷を乗り越えて融和するよう努力しなければなりません。

また、民主主義社会にふさわしい多元的な歴史像と、世界史との関連性を具現化する場を目指しています。韓国の現代史は国際的なパワーバランスの変化の中で展開された側面があるので、その関係を考慮しなければなりません。そのため、特定のテーマで展示を行う際には、世界史における類似事例や、世界史的文脈の中で韓国の現代史の事例はどのように位置づけられているかを比較することで、来館者の皆様に多元的な歴史像を描く能力を養ってもらいたいと思います。

Q: 館長の在任期間中に重点を置く事案は何でしょうか?

来館者の皆様に快適にご利用いただけるよう、館内外の空間を整備する計画です。また、国民が懸念している社会問題に共に取り組むための未来志向の事業を推進したいと考えています。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、暮らしと生命の問題、自然と人間の共存といった社会的課題が関心を集め、安全な共同体を構築しなければならないという意識が強まっています。これに関連して、過去の歴史の中で感染症の流行がどのように社会を変えたのかを振り返り、これから何を準備すべきかを考える展示などは、有意義な試みになると思います。

また、新型コロナウイルスの影響で非対面型のサービスが定着するなか、こうした変化に応じて良質のオンラインコンテンツを継続的に開発するとともに、新しい技術を活用した展示の開催を推進しています。その一環として、当博物館3階展示館の一部を、先端の展示技法を採用した「メディア展示室」に模様替えし、今年末から新たな展示を披露する予定です。さらに、文化体育観光部と韓国コンテンツ振興院が推進するプロジェクト「光化時代(Age of Light)」に積極的に参加し、当博物館を「メディアアートの空間」にしたいと考えています。

読者および来館者の皆様の変わらぬご声援に感謝するとともに、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

THE STORY IN HISTORY

大韓民国が「色」をまとったあの日

1928年に初めて送信実験が行われ、その後実用化したカラーテレビ。韓国では1974年に国内生産が始まった。その第1号は亜南(アナム)産業。同社は、日本の松下電器産業(現パナソニック)と合弁で韓国ナショナルを設立し、カラーテレビCT-201を生産した。その後、サムスン電子や金星社(現LG電子)などの企業が独自にカラーテレビを生産して海外に輸出するようになり、1978年には約50万台の輸出実績を達成した。

このように韓国は1970年代半頃からカラーテレビを製造・輸出し、放送局の技術的にもカラー放送が可能な状況だった。しかし、当時の大統領やメディアは、カラーテレビが高価であるため社会階層間の衝突を生む可能性があることや、電力不足などの理由でカラー放送やカラーテレビの国内販売が認められなかった。

カラーテレビは1970~1980年代の輸出の主役のひとつだった。
©聯合ニュース

その後、1980年頃生じた第2次オイルショックや、アメリカ、ヨーロッパなどの輸入規制措置などによって経済が急速に萎縮すると、これを打開しようと同年8月1日にカラーテレビの国内販売を認め、12月1日からカラー放送が始まった。カラーテレビは飛ぶように売れ、人々はカラーの画面に魅了された。テレビ画面の中の空間や人物を白黒でしか見たことのない当時の人々にとって、カラーの画像は衝撃そのもので、「色彩革命」とも呼ばれた。

カラーテレビの普及と輸出によって産業が活性化したほか、企業のマーケティングや広告においても色を使ってメッセージを発信するようになった。色に関する情報が生活全般に浸透し、人々は視覚文化を積極的に受け入れ、慣れ親しんでいった。このように「色彩革命」によって韓国はモノクロ放送の時代とは全く異なる世界になったのである。

1986年、人々が26インチのカラーテレビ36台からなる「マルチビジョン」を視聴している。
©聯合ニュース

COLLECTION HIGHLIGHTS

過去のカレンダーが示す時代相と当時の人々

カレンダーは私たちの暮らしの中で、さまざまな役割を果たしてきた。大韓民国歴史博物館が所蔵する1950〜1960年代のカレンダーから、当時の人々がカレンダーを通して語ろうとした物語に触れてみよう。

大韓民国歴史博物館が所蔵しているカレンダーの中で最も古いものは1950年のカレンダーで、「檀紀4283年」と表記されている。左上に「建設」という文字があり、工場や高層ビル、歯車が描かれている。また、中央の広々とした明るい野原で絵を描く男性の姿から、明るい未来のイメージが伝わってくる。

1953年のカレンダーは6.25戦争(朝鮮戦争)中に印刷されたもので、太極旗と星条旗、国連旗が描かれている。漢字で「大韓民国統一万歳」と書かれ、朝鮮半島の統一への願いがこめられている。前述のものとは異なり檀紀と西紀が併記されているほか、「大正」「昭和」といった日本の年号表記もあることから、植民地支配が終わって7年が経ってもまだ日常生活に植民地時代の名残があったことがわかる。

1962年1月のカレンダーは、自由主義陣営と共産主義陣営の姿を、色合いや人々の表情などで対照的に表している。また、下にはソ連とアメリカの兵器を比較してソ連の劣勢を強調する文章が書かれていて、自由主義世界のパワーや前向きなイメージを伝えようとしている。

最後に1968年のカレンダーには、朴正煕政権が推し進めた「家族計画事業」が反映されている。「適切に産んで立派に育てよう」という標語と共に、母親と2人の子供が描かれている。1968年は家族計画事業第2期(1967〜1971年)に当たる時期で、当時保健社会部は子宮内避妊器具の使用を推奨して家族計画の必要性を訴えていた。そんな保健社会部が目指した家族像が表現されている。

以上のように、カレンダーは当時の政治、経済、文化を反映する時代の 産物である。勿論生産者の政治、思想的制作とは別にカレンダーはその当時利用する側にとっては新年を迎える前に準備するものであり、ときめきを与えるものである。2022年はコロナ禍が収束し、友達との約束や旅行計画でカレンダーが埋め尽くされることを、誰もが願っているだろう。

EVENT HIGHLIGHTS

文化公演レビュー

大韓民国歴史博物館では毎月最終水曜日の定期文化公演や、歴史的な日を記念するための特別文化公演を開催している。オフラインでの上演も行う一方で、より多くの人々に楽しんでもらう為に、大韓民国歴史博物館のYouTubeチャンネルでライブ配信やハイライト動画の配信も行っている。

Jambinaiコンサート(6月30日)

国楽をベースにしたポストロックバンド「Jambinai」が、独立軍の意志、現代史の中の犠牲者たちへの哀悼、現代を生きる人々に送る応援メッセージ、日常を生きる人々の物語を音楽で聞かせてくれた。夏の夜を背景に、夢に向かって頑張る人々に対して苦しみはいつかきっと幸せに変わると語り、心を癒やしてくれるステージが繰り広げられた。

キム・ジョンホとキム・テウク親子の歌で楽しむ八道遊覧(7月14日)

7月14日には、親子そろって歌手として活躍するキム・ジョンホさんとキム・テウクさんが、各地域を代表する曲をアコースティックギターのサウンドに乗せて披露した。旅行すら難しいコロナ禍において、歌を通して八道遊覧(全国をめぐること)の気分を楽しみ、癒やされるひとときとなった。

下記のYouTubeページでハイライト動画を配信中。

National Meseum of Korean Contemporary History Newsletter 2021-3, Vol.58
198 Sejong-daero, Jongro-gu, Seoul, 03141, Republic of Korea / 82-2-3703-9200 / www.much.go.kr
Editor: PARK Sookhee, KOOK Sungha, HONG Yeonju, KIM Hyewon, MOON Soyoung
/ Design: plus81studios

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