2021-2 / Volume 57 / ISSN 2733-7138

SPECIAL EXHIBITION

国家登録文化財20周年特別展
「登録文化財、光化門で見る」

韓国の「文化財」と聞いて真っ先に思い浮かぶものは何だろうか。きっと、国宝第1号の崇礼門や、三国時代のきらびやかな金冠、高麗時代の象嵌青磁といった昔のものを思い浮かべるのではないだろうか。しかし、私たちの身近なところにも近現代史の面影をとどめる文化遺産がある。それは「国家登録文化財」である。国家登録文化財は、身近な存在であるがゆえに大切さに気づかれず、時間の経過とともに失われてしまう文化財を守ろうと2001年に定められた制度で、2021年4月5日の時点で901件が登録されている。

大韓民国歴史博物館は国家登録文化財制度導入20周年を記念して、文化財庁と共同で特別展「登録文化財、光化門で見る」を開催している。本特別展では、近現代史の荒波の中で伝統と革新を主体的に融合させようとした試みが見て取れる主要な国家登録文化財を紹介する。激変する時代に、伝統を継承しながらも外国の制度や文化を受け入れ、新しい文化を生み出そうとした人々の努力や情熱、そしてさまざまな物語に触れることができる。

国家標準近代度量衡器、国家登録文化財第320号、 国家技術標準院所蔵、1900年代初

本展で紹介する国家登録文化財は、実物資料や映像など80点。展示は4部構成となっている。プロローグでは、すべての国家登録文化財を映像によって紹介し、第1部「知識の体系、暮らしを変える」では、度量衡、医学、絵画、調理法など昔からの知識を、近代文物を受け入れることにより新たな形で伝承した様子を展示している。第2部「言葉を守り、意味を伝える」では、日本植民地時代にハングルを国語として確立して日本の帝国主義に立ち向かおうとした努力や、視覚障害者のためにハングル点字を作ろうとした取り組みがわかる。第3部「建てて、作る」では、国家登録文化財に指定された建物の立体映像を見ることができる。第4部「解放、新しい文化を生み出す」では、植民地支配から解放された後の時代、ファッション、スポーツ、映画、漫画などの分野で新しい文化を生み出そうとした動きを紹介している。そして最後にエピローグでは、国家登録文化財制度の説明や登録状況、登録申請手続きといった概要をまとめ、わかりやすく説明した。

アリランドレス、国家登録文化財第613号、申恵順(シン・ヘスン)所蔵、1959年

BOOKS & ARTS

外国人の目に映った20世紀初めの韓国と韓国の人々
「COREA e COREANI」

1902年11月から翌年5月まで約7カ月間韓国に滞在した第3代イタリア領事のカルロ・ロセッティ(Carlo Rossetti, 1876~1948)は、本国に帰った後、韓国での滞在経験をもとに1904年に「COREA e COREANI」(「韓国と韓国の人々」の意)という本を出版した。当時、1904年の日露戦争を前後に欧州各国で極東アジアへの関心が高まっていたのである。同書にはロセッティが撮った写真のほか、日本の村上写真館の記念品の写真なども収録されていて、学校、市場、公演場など韓国の人々の生活の場がありのままに映し出されている。

当時、ほかにも外国人旅行家や宣教師、人類学者が残した韓国についての記録はあったが、同書のように重要な地位にいる著者が一定期間滞在しながらソウルを観察し、膨大な写真と文章で公的・私的な記録を残した例はあまりない。さらに同書は、現在出版される本に引けを取らないほど写真やイラストの質が高く、時代状況を比較的正確に記していることから、史料としての価値が高い。

1904年に出版された「COREA e COREANI」の表紙

TODAY IN HISTORY

歴史の中の今日 – KBS 1TV 特別生放送
「離散家族をさがします」

6.25戦争(朝鮮戦争)で多くの家族が南と北に生き別れになり、約1000万人の離散家族と10万人の戦争孤児が生まれた。6.25戦争勃発から33年経った1983年、当時まだ南北の対立が続くなか、韓国放送公社(KBS)は休戦協定(1953年)締結30年を迎えて特別番組「離散家族をさがします」を放送した。戦争で離れ離れになった韓国内の家族の再会を助けるというものである。1983年6月30日夜10時15分から生放送が始まり、大きな反響を呼んだ。KBS中央ホールとその前には大勢の離散家族が押し寄せた。また、離散家族の再会という感動的な場面を伝えるために国内外のメディアがKBSに集結し、「離散家族をさがします」は世界中の注目を集めた。

当初1回限りの特集番組として企画されたが、熱い反響に応えるためKBSはそのまま放送を延長し、11月14日まで138日間、時間に換算すると453時間45分の生放送で続けられた。この番組には合わせて5万3536家族が出演し、このうち1万189家族が再会を果たした。そしてKBS本館中央ホールに設けられたプレスルームには世界25カ国の記者が常駐しながら再会のニュースをリアルタイムで伝えた。AP、UPI、ロイターといった世界の大手通信社のほかさまざまな新聞社や放送局が大きく取り上げたということで、外国のメディアからも当時の雰囲気を窺い知ることができる。

その後1985年に北朝鮮代表団がKBSを訪問して同年9月に南北離散家族再会が初めて実現し、朝鮮半島の緊張緩和に大きく貢献した。138日間に及ぶ壮大な記録となった生放送はその功績を評価され、第6回世界ジャーナリスト大会で「1983年の最も人道的な番組」に選ばれたほか、1984年のゴールドマーキュリー世界平和協力総会で放送機関としては初めてKBSが「ゴールドマーキュリー・アドホノレム(AD HONOREM)賞」を受賞した。そして、2015年にはユネスコ世界記憶遺産に登録され、その価値を認められた。

離散家族再会の写真 (京郷新聞社所蔵)

EVENT HIGHLIGHTS

博物館文化公演レビュー

大韓民国歴史博物館では月2回、水曜日に定期文化公演を行っている。5月5日にはこどもの日を記念して人形劇「ムンドゥン王子」を上演した。伝統人形劇と仮面劇を融合させた創作人形劇で、国家無形文化財第7号に登録された仮面劇「固城五広大(コソンオグァンデ)」のキャラクター「ムンドゥンイ」をモチーフに創作された。オリジナルの仮面劇では「ムンドゥンイ」は苦しみをプクチュム(太鼓舞)で表現する人物として登場するが、創作人形劇では世の中を嫌う少年として登場し、「ムンドゥンイ」が自分だけの星を探して旅に出る。

人形劇「ムンドゥン王子」公演の様子

また、5月26日には「5月の森」と題した音楽公演が行われた。長年の音楽仲間であるホン・ジェモクとダンダンが、音楽を通して、爽快な風と森の清々しい香り、一年の中で最も鮮やかな色彩を放つ5月の風景を届けた。

「5月の森」公演の様子

下記のYouTubeページでハイライト映像を配信中。

National Meseum of Korean Contemporary History Newsletter 2021-2, Vol.57
198 Sejong-daero, Jongro-gu, Seoul, 03141, Republic of Korea / 82-2-3703-9200 / www.much.go.kr
Editor: PARK Sookhee, KOOK Sungha, HONG Yeonju, KIM Hyewon / Design: plus81studios

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